晩飯を小説風に書いてみる

「ありゃ、なかったか」

 冷蔵庫を開けて、思わずひとりごちる。

 今日の晩飯は、昨日と同じく野菜炒め。主菜が同じな分、味噌汁は具材をちょっと変えて、蒸し大豆と豆腐、それに冷凍していたしめじとエノキを入れれば十分だな、と考えながら帰宅したのだが、豆腐を使い切っていたのだ。

 フリーズドライの野菜もあるし、豆腐はなしでもいいかと一瞬考えたものの、最近は絹ごしどうふのツルッとした食感がお気に入りになっているので、やはり物足りなさが残る。

 かくして、一度脱いだ靴下をもう一度履き直し、スーパーへ買い物にいくことに。

 豆腐だけでもいいけれど、閉店間近の割引セールで「大人のポテサラ」も購入。パッケージの中のベーコンに目を引かれたのだ。しかし、「ベーコンが気になったから」で大人のポテサラを買ってしまう人間は、果たして大人と呼んでいいのだろうか。

 ともあれ、無事豆腐を購入できたので、帰宅して早速晩飯の準備に取り掛かる。

 コンロが一つしかないので、一旦味噌汁を作ったら熱を逃さないよう蓋をして、野菜炒めに取り掛かる。昨日は塩胡椒と味の素で味付けしたが、今日はふと思い立ち、「フジッコ」を入れてみる。以前パスタに使い、それなりにしっかりした味付けになったので、野菜炒めの味付けに使えるのではないかと考えたのだ。

 炒めた野菜を皿に盛り、フライパンを拭いたら、今度は4割引で購入した牛カルビを焼き始める。片面をある程度しっかり焼いたら裏返し、色が変わる程度でコンロの火を止める。余熱を通している間にご飯や味噌汁を盛り付ける。

「いただきます。……まずはやっぱり、これからかな?」

 フジッコを入れた野菜炒めをつまむ。箸が止まるほどひどい味にはならないと思うが、食欲が減る可能性はあるので、ちょっと少なめに口へ運ぶ。

「……おお?」

 悪くない。いやむしろ昨日作ったものより味付けがしっかりしていて好みだ。

 普段の野菜炒めはどうにも物足りなさが感じられ、ついつい肉を入れがちなのだけど、これなら肉なしでもいけるかも。

「次に野菜炒めセットが買えたら、肉なしにチャレンジしてみよう」

 怪我の功名で、新たなレパートリーが見つかった。何より、あんまり使い道を見出せなかったフジッコを消費できるのがありがたい。

 残ったカルビは賞味期限も近いので、贅沢に明日の朝食で回そう。

 

(約1000文字、25分)